USDTのコンセンサスについて

USDT概要

Tether Limited社(以下Tether社とする)は2015年11月に香港と米国にオフィスを構え、2015年2月に米ドルとペッグ(1USDT = 1米ドル)した暗号通貨、いわゆるUSDTというステーブルコインを発行しています。

JL VAN DER VELDE(ジャン・リュードヴァイカス・ヴァン・デァ・ヴェルデ)CEOは暗号通貨のボラティリティからユーザーを保護し、グローバルに、瞬時に、安全に保管、送信、受信できるトークンプラットフォームの構築を目的に掲げています。

しかし、Tether社に対する市場からの不信感は強く、@Bitfinexedがその不信感を強く指摘しています。

事実、同社に対する透明性には疑問が残りつつも、メディアで取り上げられるのは表面的な報道や時次ネタが多く、多くのユーザーは「米ドルに連動した信頼性に欠けたステーブルコイン」という印象が強いのではないでしょうか?

市場で圧倒的な存在感を放つUSDTについてもう少し知見を深めておく必要があると感じたためレポートにまとめることにしました。

USDTの資金の流れを確認
coinlib.io

コンセンサスアルゴリズム

Tether社のUSDTは、Proof of Reserves(PoR)というコンセンサス方式を採用しています。

PoRという仕組みは、Tether社自身が新規のTether(USDT)の発行権限を有しており、ユーザーが指定の口座に法定通貨を預け入れることで同額のUSDTが発行され、逆にUSDTを指定の口座に入金することで法定通貨を引き出すことができ、その際に預けられたUSDTが消失するという仕組みになっています。

以下にそのステップを示します。

ステップ1
Tether社指定の口座にユーザーの法定通貨を預け入れる。

ステップ2
Tether社はユーザーのTetherアカウントを生成し、ユーザーがステップ1で預けいれた法定通貨と同等分のUSDTがアカウントにチャージされます。(10k USD deposited = 10k tetherUSD)

ステップ3
ユーザーは、P2PでUSDTを転送することができ、取引所での交換および保管をすることができます。
(このようにUSDTが循環していきます。)

ステップ4
ユーザーはUSDTを法定通貨に換金するために、アカウントにUSDTを入金します。

ステップ5
Tether社は入金されたUSDTを破棄して、ユーザーの銀行口座に同等分の法定通貨を入金します。

これらのステップはPoRという仕組みの上で発行されるUSDTの獲得手順になるが、大半のユーザーは取引所などの市場で手に入れる方が手間もかからず容易であることから、実際にこの手順を体験することはまずないでしょう。

実際にPoRの仕組みを用いてUSDTの発行をするのは、Tether社自身であり中央集権的なその仕組みと発行プロセスに不信感が募っています。(特に心配されている問題は、発行されているUSDTの枚数と同等の米ドルが本当に存在しているのか?というものです。)

Tether社のウォレット残高とUSDT発行に関する情報はこちらのオムニエクスプローラーからご覧頂けます。(Tether社のアセットIDは#31です。)
omniexplorer

直近で言えば2018年7月21日 3:34:16 AMに100,000,000(1億)万枚のUSDTが発行されており、「Grant Property Tokens」と表示されています。

その少し前が2018年6月25日 10:59:27 PMの250,000,000(2億5千)万枚です。

これはコインテレグラフでも取り上げられていましたね。

市場の不信感とは別に、Tether社はPoRを用いたコンセンサスに不正はないと主張しており、Proof of Solvency(*1)による支払い能力の証明とリアルタイムな透明性(リザーブ)を提供しています。

そのリザーブがこちらになります。

リザーブの確認はこちら
wallet.tether

*1 Proof of Solvency:リアルタイムに資産の証明をすることで、支払い能力があることをユーザーに伝える。普通企業の貸借対照表を見ようと思えば、決算を待たなければいけませんし、上場企業ですら四半期発表を待たないといけないが、Proof of Solvencyは常に企業内(プロジェクト内)の資金状況を開示する。

また、2018年6月頃に米ワシントンに本拠を置くFreeh, Sporkin & Sullivan LLP(FSS)を通じ資金に対する監査を行ったことを報告しましたが、最終的に下記のような発言をしており正式な資金の証明には至りませんでした。

FSSは監査法人ではなく、今回の調査は会計基準のGAAPに沿っていない。銀行口座に関しては、銀行員が相応の権限で情報を開示したという想定に基づいており、これに関して追加の調査を行うことはない。

USDTの疑惑についての記事
btcnews

FSSの監査結果のレポート
tether.to/wp-content

コンセンサスのアプローチ方法によって、トークンはスケーラビリティ、分散性、セキュリティーの優位性に差異があり、これら3つはトレードオフの関係で競合します。

Tether社のUSDTはどのようなコンセンサス設計なのかその説明をしていきたいと思います。

スケーラビリティー

Tether社のUSDTは、ビットコインブロックチェーン上で新しいアセットを作成できるプラットフォームであるOMNI(*2)レイヤー上で発行されるトークンで、すべてのUSDTトランザクションは、ビットコイントランザクションに記録されます。

*2 OMNI:ビットコインのブロックチェーンを利用した、ビットコイン2.0と呼ばれるビットコイン上に構築された、デジタル通貨とプラットフォームであり最も古い歴史を持つ。

当然ビットコイントランザクションに取引を記録している為、ブロック生成期間は10分でブロックサイズも1MBになります。

しかし、あくまで記録・資金管理のためだけにビットコインブロックチェーンを使用しており、トークンのアセット管理は100%中央集権的な仕組みで動いています。

Tether Critical Announcement
tether-critical-announcement

ユーザーがUSDTを使用するにあたって、ブロックサイズや送金時間による制限を受けることなく使用することができます。
むしろ中央集権的なトークンにおいて、ブロックサイズや送金時間による制限があっては本末転倒と言えます。

分散性

Tether社のUSDTは、同社がトークンを中央集権的に管理しており、その価値もTether社が保管している米ドルに依存しており、度々話題になっているUSDTの枚数と担保している米ドルが連動していないことが万一発覚した場合には、USDTの価値は当然下がることになり、トークン設計の観点から成り立たなくなります。

また、Tether社はホワイトペーパーにて下記のようなカウンターパーティーリスクを述べています。

  • We could go bankrupt
    私たちは破産する可能性がある。
  • Our bank could go insolvent
    私たちの銀行は破産する可能性があります。
  • Our bank could freeze or confiscate the funds
    私たちの銀行は資金を凍結または没収する可能性がある。
  • We could abscond with the reserve funds
    私たちは準備金を持ち出す可能性があります。

さらに、下記の記事ではUSDTトークンの集中化に関しても言及しています。

記事が少し前のものになるので現状とは異なりますが、上位0.2%がトークンの合計供給量の90%以上を所有していることを示唆しています。

In Tether’s case, the top 200 addresses out of Tether’s nearly 100K active addresses hold over 2B USDT. Yes, the top 0.2% owns over 90% of the token’s total supply. This is more than double BTC’s wealth concentration.  引用:https://hackernoon.com

法定通貨を担保に発行しているステーブルコインという性質上、ボラティリティーの激しい仮想通貨市場でトークン価格を維持するために分散性を犠牲にしてスケーラビリティーを取っていることになります。

セキュリティー

Tether社のUSDTは、同社が管理しているウォレットに存在しており、ビットコインのブロックチェーン上で管理しているのは残高のみです。

つまり、ブロックチェーンによるセキュリティー維持はなく、同社のセキュリティーシステムに依存して外部からの攻撃に対処しています。

2017年11月19日には、外部からの攻撃によってUSDを管理しているウォレットから不正に3000万ドルが送金されました。

それに対して同社はUSDTのハードフォークでハッキングを無効化する処置を取ることを発表しました。
ハッキングされたUSDTのブロックチェーンをハードフォークして、その盗まれたUSDTのチェーンをほぼ無価値にするという対応です。(このハッキングに対する具体的な情報は開示されていません。)

USDTというトークンは、ステーブルコインとして価格を米ドルに連動させることに注力して、ユーザービリティーの向上のため、分散性を犠牲にしていることが分かりました。

また、セキュリティーに関しても優位性があるわけではないが、中央管理者の立場を活かして補っているという見方ができます。

Reference

CoinPicks Lab内では以上のテーマでもう一歩踏み込んで解説しております。
もっと知識を深めたい方はLabでお待ちしています。
CoinPicks Labとは? | CoinPicks|仮想通貨の価値を伝える


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今井 涼二

今井 涼二

2015年より暗号通貨を追及中。2018年からは大麻産業の動向も同時に追いかけています。CoinPicksでは「仮想通貨の価値」をテーマに一歩踏み込んだ情報を配信していきたいと思います。

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